将来親の介護をしたくないと考えている方もいますよね。
自分自身の生活が忙しい方や昔から親と折り合いが悪い、住んでいる場所が離れているから通ってまで介護をしたくないなど理由は様々でしょう。
親の面倒はその方の配偶者である妻または夫が見ることになりますが、お互いに高齢なので実際には子どもが面倒を見るパターンが多いです。
親の介護しなければならない状況になったとき、子どもである自分には大きな負担にもなります。
私の知人は足の不自由な父親の介護を1年程行っていましたが、家での生活も買い物も受診も父親の介護を中心に回っていました。
父親はそんな知人へと、自分の思い通りにならない怒りをぶつけることも多かったようです。
その結果知人は疲れ果ててしまい、張り詰めた糸が切れるように親の介護を拒否するようにもなってしまいました。
今では父親は介護施設に入所していますが、必要最低限の届け物に行くくらいでほとんど顔も合わせていないそうです。
本記事では子どもが親の面倒を見る必要性や親の面倒を少しでも見なくてすみ、負担を減らす方法を紹介していきます。
目次
①親の面倒は子どもがみないといけない?
子どもには親の扶養義務がある
なぜ子どもが親の面倒をみるべきと言われるかですが、実は民法にもそういう条文があるからです。
「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある。」と明確に定めています。直系血族というのが親子や祖父母と孫の関係のことです。
つまり法律でも「子どもは親の面倒をみなさい」と決められているわけです。
ですが家庭の状況によっては子どもが1人だけの家もあれば、3人4人いる家庭もありますよね。
子どもの人数によって負担は大きく変わります。
先述したように介護するのが1人だけの家庭では負担が一身にのしかかり、大きな負担になるため介護する子どもが潰れてしまう事態も起こりえるのです。
そのため介護をする時は自分だけの力でどうにかするよりも、力を借りて行う方が関わる全員にとって幸せにつながるのです。
扶養義務は介護する義務ではない
扶養義務があると言いましたが、勘違いしないでほしいのは「扶養義務≠介護義務」ということです。
扶養義務というのはあくまでも「金銭的な支援をしなさいよ」というだけで、直接面倒をみなければならないものではありません。
といっても義務は義務なので、お小遣い程度のお金を渡して「扶養義務を果たしました」というわけにはいきません。
放置に近い状態ですと、場合によっては刑罰も課せられますので注意してください。
扶養義務というのは「自分の生活が困らない範囲で行えば良い」というものです。
これなら子どもが遠方にいて直接の支援は受けられなくても、資金の援助をすれば義務を果たしたことになりますね。
介護が始まる時に兄弟がいる方は、どのような支援を受けられるか相談してみると良いでしょう。
敷居は高いかもしれませんが、家庭裁判所に扶養義務の相談をするとどの程度の支援まで行えばよいか、家庭の事情を考慮して客観的に判断を下してくれます。
必要に迫られた時は専門家に相談しましょう。
自分を大事にする選択をする
扶養義務はあくまで「自分の生活が困らない範囲」で良いので、自分の生活を犠牲にしてまで行う必要はありません。
無理をすればいずれ限界が訪れるため、一番優先すべきは自分自身だと念頭に置いてください。
私の関わったことのあるご家庭は、高齢な母と二人暮らしをしていた娘さんが母の介護をしなければならないと、仕事を辞めてしまいました。
その結果、母と一日中二人で過ごし、外の人との接触もなかったそうです。
ある日、近所の民生委員の方がご家庭を訪問すると家の中はゴミだらけで、母も娘もお金がなくなり食事にすら困る状況に陥っていました。
娘さんは仕事を辞めたことで収入もなくなり、母の年金でなんとか食いつなぐ生活を続けていたそうです。
もう少し発見が遅れていたら、母か娘のどちらかが倒れていただろうという状況でした。
介護や扶養をしなければならないとは言え、このご家庭のようにみんながボロボロになるまで続けては不幸になってしまいます。
面倒を見るために自分を犠牲にして無理をすることはないので、少しでもその負担を減らすようにすることが大切です。
②親の介護を拒否した時はどうなるか?
親族との関係に影響することも
自分の親の介護を拒否した場合、一番に考えられるのは親族からの批難を浴びることです。
今でも高齢の方によくある考え方としては・・・
- 親の面倒は子どもが見るべき
- 介護施設に入れるのは世間体が悪い
- 周りが認知症や寝たきりばかりの場所に入れるのは可哀想
このように考える方がいるのも事実です。
介護を出来ないとしても単に「嫌だから」ではなく、「~~という理由で介護しきれない」とちゃんとした理由を伝えましょう。
親族関係に与える悪影響は、介護される本人が亡くなった後にも残り続けるので繊細な問題です。
介護される方が亡くなった場合にトラブルになることも
先に述べたとおり、介護される方が亡くなってからも親戚関係は続きます。
しかし介護関係でトラブルになったりすると、その後の親戚関係や兄弟関係に大きく響きます。
例えば相続が発生した時に、兄弟同士でいがみ合うことになったりするのは嫌ですよね。
他にもお葬式や親族が集まる行事の際に、介護しなかったことで嫌味を言われたり、辛い思いをすることもあります。
介護をただ拒否するのではなく、本人や家族を交えて事前に相談する場を設けておくことが大事になります。
介護する人も介護される人もみんなが納得できるよう、話し合いは必ず行いましょう。
③介護の負担を減らす方法とは
まず要介護認定を申請する
親の面倒を可能な限り見ずに、介護負担減らすためには福祉サービスや介護施設を利用する必要があります。
要支援または要介護認定を受けるには、一人では完全に自立した生活が送れないということが条件になります。
しかし家族の介助が必要になっているとしても客観的な指標がなければ、介護サービスを利用する適応はないとされてしまいます。
一般的に介護サービスを利用するためには、市区町村に申請して実地調査を受け、要介護認定をしてもらわなければなりません。
要介護認定を受けた場合、要介護1ですと訪問介護を週3回程度と訪問看護や通所介護を週1~2回程度利用できるようになります。
終身で入居可能になる特別養護老人ホームは、要介護3以上で利用可能になります。
要介護3と認定される明確な基準はありませんが認知症を患っており、自力での歩行ができない、介助がなければ日常生活全般の行動ができない程度を目安に考えてください。
要介護3にもなると家族の負担も大きく、共倒れになることもあるため「要介護認定してもらったほうがいいかも・・・。」と思ったら、少しでも早く申請することをおすすめします。
他人に惑わされず施設を選ぶ
親の面倒を見ないで介護サービスに任せることに抵抗のある方もいるでしょう。
その抵抗感の理由に親戚や近所の人の目などの体裁を気にしてという部分はありませんか。
親戚から「親の介護は子どもがするもの」と言われたり、近所の人から「自分の親を施設に預けるなんて・・・」と言われることを恐れて、したくない介護を自ら行うことにした方も中にはいらっしゃいます。
私の知人にもそういった理由で介護に疲れてしまった方がいました。
本音では母の介護をしたくなかったのですが、母の妹で自分の叔母に当たる人に「子どもは親の面倒を見るのが当たり前」と言われてしまったために、仕事も外出も我慢して介護をしていたそうです。
母も介護してもらうのが当然のようになっていたため、知人はストレスと疲労で倒れてしまいました。
その後は一人での介護に限界を感じ、母の要介護認定を受けて介護サービスを利用しているそうです。
このように直接介護をするわけではない他人から色々と言われ、「介護をしないとダメな人間だと思われる」「親の面倒を見たくない自分は冷たい人なのだろうか」と思ってしまうこともあるでしょう。
そんな時は意識を変えて、「介護素人の自分より、専門資格のある人にやってもらう方が自分も親も安心していられる」と考えてみてください。
人一人のお世話をするというのは想像以上に大変なので、無理に面倒を見る必要はありません。
親に合った施設を探し、お金を払ってサービスを受けることも立派な恩返しになるので、他人の意見に惑わされることなく介護を任せる、という選択肢も考えてみましょう。
介護費用負担の軽減する制度
介護サービスを利用するのに一番の問題になるのは介護費用です。
施設によりますが施設の入居は一時金だけでも数十万円、毎月の利用料が10万円以上掛かる施設も多いのです。
このような費用負担を軽減することで、親の介護負担を軽減することができるので、利用できる制度を紹介します。
高額介護サービス費制度
介護保険を利用した際に自己負担で支払った金額が上限に達すると、上限を超えた分が払い戻される制度です。
手続きは市区町村の介護保険窓口で行えます。
利用開始月の1日から2年経過で時効になるので注意しましょう。
世帯収入によって上限額が変わるため、親を別世帯の扱いにすると負担限度額が下がることもあります。
医療費控除
1月1日から12月31日までにかかった世帯の医療費が10万円を超えた場合に、超えた分だけ所得から控除される制度です。
適用するには確定申告が必要です。
また高額介護サービス費制度で払い戻された分は、対象外になるため注意しましょう。
高額医療・高額介護合算療養費制度
医療費と介護保険を利用した費用の合計が、一定額を超えると払い戻される制度で、医療保険と介護保険の両方を利用している世帯を対象にしています。
手続きは加入中の健康保険の窓口で行えます。
自己負担額は加入中の健康保険や所得、年齢によって異なるため確認しましょう。
生活保護申請
生活保護は世帯収入や、援助してくれる親族等がいるか否かによって受給できないこともあるので、どうしても生活保護申請しなければならない時は、親と世帯分離しておくことをおすすめします。
介護費用負担を軽減する方法はお住まいの地域によって、この他にもありますが一般的にどの地方自治体でもこれらの方法は申請可能です。
「親の面倒は見たくないからサービスを利用したいけど、費用が高くて・・・。」という方も、これらの制度を利用すれば介護費用の負担を大幅に軽減できます。
申請がまだの方はそれぞれの窓口で確認してみてください。
④まとめ
親の面倒を見たくない方向けに子どもがするべき義務の範囲と、介護負担を減らすための方法を紹介しました。
子どものすべき義務はあくまで自分の生活が困らない範囲での生活扶助までで、介護を強制するものではありません。
費用負担も施設入居は毎月大きな負担になるため、費用負担を制限する制度の利用をおすすめします。
親の介護を少しでもしなくてすめば、その時間をご自分の仕事や趣味などに使うことができます。
関わる全員が納得の行く決定をすることで、介護負担を軽減しましょう。