現在、高齢の親と暮らしている人にとっては、自宅が高齢者でも暮らしやすい設計になっていないケースというのもそう珍しい話ではありません。
そうなってしまうと、適宜見守りや介助が必要になってしまい、それが大変だと感じている人も多いでしょう。
そのような場合、バリアフリーへの改修工事を検討する方が多いのですが、意外と皆さん共通しているのが、バリアフリーとは具体的にどういったものかを知らない人が多いようなんですね。
自宅をバリアフリーにするのであれば、事前にバリアフリーとはどういったものを指すのかを適切に理解していないと、高い費用を支払って工事してもらってもあまり意味をなさない可能性も出てきます。
そして、バリアフリーへの改修工事を行うにおいて、重要になってくるのが、手すりを取り付けたり、トイレの配置を変更する事などになってきます。
それでは、なぜそれらがバリアフリーにおいて重要になってくるのでしょうか?
今回は、そんな自宅で快適なバリアフリー生活を送る為に、今すぐやっておきたい対策について紹介していきます。
こんな人に読んで欲しい
- 自宅に高齢の親がいるので、自宅をバリアフリーへ改修しようとしているが、具体的にどういった工事をすればいいのか分からない人
- 今後、高齢の親と同居するかもしれない人
目次
バリアフリーが必要な理由と基準
(引用:【フラット35】公式サイト)
施設に入所せずに高齢の親と一緒に暮らしていく事を選んだのであれば、自宅を高齢者でも安心して生活する事のできるバリアフリー設備への改修が必要になってきます。
バリアフリーを備えた住宅でなければ、自宅内での転倒リスクが上がってしまい、最悪のケースになると、命を落とす危険性があるでしょう。
高齢になってくると、健常者に比べて、判断力や足腰の筋力低下が顕著になってきます。
そうなってしまうと、健常者であればまず転倒事故を起こさないような場所であっても、高齢者だと筋力低下などにより転倒事故を起こしやすくなってしまいます。
また、高齢になると骨髄の老化も顕著になってくるのも理由の一つです。
健常者である自分の視点だけで、自宅のどこを改修すればいいかを考えてしまうと、見落としてしまいがちになり、思わぬ転倒事故を起こしてしまう可能性があります。
その為、自宅をバリアフリー設備へ改修する際には、必ずバリアフリーの基準とは何かをしっかり理解してから改修を行った方がいいでしょう。
それでは、バリアフリーの基準とは、一体どのようなものなのでしょうか?
バリアフリーとは、「高齢者等配慮対策等級3」の基準を満たしている設備の事を指しています。(参考:バリアフリー性に関する基準(高齢者等配慮対策等級3))
高齢者等配慮対策等級3の基準を簡単に説明すると、転倒防止や車いすを使用しての生活でも支障なく、日常生活を送れる事などが挙げられます。
この基準を満たす為に重要になってくるのが、「日常生活空間」の概念です。
「日常生活空間」とは、玄関やトイレ、浴室など日常生活を送るにおいて最低限必要になってくる空間の事を指しています。
つまり、バリアフリーへの改修を行う際には、この「日常生活空間」を中心に検討してみるのがいいという事です。
それでは、具体的にどのような対策をすれば、高齢者が自宅でも快適なバリアフリー生活を送る事ができるのでしょうか?
自宅で快適なバリアフリー生活を送る為に今すぐやっておきたい対策3選
バリアフリーが必要な理由と基準について理解が深まったら、次は自宅で快適なバリアフリー生活を送る為に今すぐやっておきたい対策3選について見ていきましょう。
具体的には、
- 手すりを取り付ける
- トイレの配置を変更する
- 段差を解消する
の3つが挙げられます。
以下に、それらについて、解説していきましょう。
手すりを取り付ける
自宅でバリアフリーの生活を送るには、手すりを取り付ける事が重要になってきます。
手すりを取り付ける場所としては、トイレや廊下、浴室、階段などに取り付けてみるといいでしょう。
これらは、自宅で生活を送る上で必要な導線になってくるので、積極的に検討してみる余地がありそうです。
足腰が悪い高齢者にとっては、壁伝いで歩くだけでは転倒のリスクが高い傾向にあるので、そうした転倒リスクを防ぐ為に手すりを取り付けるといいでしょう。
たとえ、今まで自立歩行ができていたという人であっても、打ちどころが悪ければ、床につまづいて転倒しただけで、それ以降ずっと車いす生活になってしまうという話も珍しくありません。
手すりを取り付ければ、親も今までより安心して歩けるようになりますし、見守りをする側も見守りへの負担を減らす事ができます。
親も手すりがある事で、歩きやすくなったと感じれたら、積極的に歩くようになるかもしれませんね。
そうした事を継続的に行っていれば、徐々に下肢筋力が向上していくというのも十分にあり得ると思います。
老人ホームなどでもこうした箇所に手すりが取り付けられているのが一般的ですので、自宅で生活を送るのなら、なおさら手すりを取り付ける意義はあるでしょう。
費用も相場としては、一箇所大体数万円程度で取り付けができるので、自宅に複数手すりを取り付けたとしても、それほど高額にはならないと思います。
このように、手すりを取り付ける事で、自宅でバリアフリーの生活を送れるようになると言えるでしょう。
トイレの配置を変更する
自宅でバリアフリーの生活を送るには、トイレの配置を変更する事も有効です。
高齢になるほど、尿意を感じる頻度が以前よりも増えやすいと言われています。
高齢者によっては、1日に10回以上トイレに行く人というのも、珍しい話ではありません。
そうなってくると、親の居室から近い位置にトイレがあった方が便利だと思います。
これならば、夜中に親がトイレに行く為に起きたときに、居室からトイレまでの移動が楽になるので、本人の身体的な負担を減らす効果が期待できます。
特に深夜になると、寝ぼけていたり、疲労感などから転倒が起きやすいと言われているようです。
私が以前勤めていた施設でも、深夜にトイレに行こうとしていた利用者が転倒してしまったという事例があります。
その利用者は、トイレを済ませてベッドへ戻る最中に急に失神状態になってしまい、後方に大きく倒れ込んでしまいました。
その際に、後頭部を強打してしまい頭から出血してしまうほどの事態になってしまいます。
幸い、職員がすぐにその事故に気が付き、至急病院で治療や検査をしてもらったので、後遺症が残らなかったのは不幸中の幸いです。
このケースでは、早期に転倒を発見する事ができたので、大事には至らずに済みました。
しかし、もし発見が遅れていると、寝たきりになってしまうなどの取り返しのつかない事態になってしまう可能性も十分あると言えるでしょう。
例えば、自分が寝ている時間帯に、親が転倒したとしても、居室が離れていると気付かない可能性というのも十分にあり得ます。
そのような親の居室と自分の居室が離れている場合であっても、こうした取り組みは効果を発揮しそうだと言えるでしょう。
こうした事から、転倒リスクを防ぐという意味でも、居室の近くにトイレを配置する事は有効になってきます。
冬場になると、夜中に布団から少し出ただけでも、かなり寒いと感じる人は多いのではないでしょうか?
これは、高齢者も同様に感じやすくなっているので、その分居室の近くにトイレがあった方が、寒さからの負担を減らすという意味でも効果的です。
可能であれば、洗面所もトイレの近くにあった方が、トイレが終わった後に手を洗う事もすぐにできるので、洗面所の配置を検討してみるのもいいでしょう。
このように、トイレの配置を変更する事でも、自宅でバリアフリーの生活を送れるようになると言えるでしょう。
段差を解消する
自宅でバリアフリーの生活を送るには、段差を解消する事も有効です。
認知力や足腰の筋肉が弱くなっている高齢者は、たとえ少しの段差であっても躓きやすくなっている為、注意が必要だと言えるでしょう。
もし、頭部を強打してしまい、それにより脳震盪の後遺症が発症してしまうと、認知力や身体機能の低下などが起こる可能性も出てきます。(参考:安岡整形外科脳外科クリニック)
特に、室内で車いすを利用して生活をしている、もしくは外出する際に車いすで出かける事があるという方は、自宅の出口までの道程に段差があると、不便だと感じやすいと思います。
こうした理由から、段差がある箇所については、業者に相談の上、段差を取り除く、もしくはスロープを設置するなどの対応を検討する必要がありそうです。
スロープにする際には、スロープの傾斜角度がどれくらいになるかも注意しておかなければいけません。
スロープの角度が高すぎてしまうと、その分スロープを登るのが大変になってしまうので、段差を解消する前と比べて足腰への負担がさほど変わらないという結果になってしまいます。
傾斜角度の目安としては、10度が理想的な角度とされているようなので、それを基準にリフォームを検討してみるのがいいでしょう。(参考:スロープ傾斜角度の目安)
車いすで一人で十分に自走できるレベルにまでスロープを調整したいとなると、それよりもさらに低い傾斜角度にしてみるのがいいかもしれません。
このように、自宅でバリアフリーの生活を送る為には、段差を解消する事も有効な手段の一つと言えるでしょう。
まとめ
自宅で快適なバリアフリー生活を送る為に今すぐやっておきたい対策3選
- 手すりを取り付ける
- トイレの配置を変更する
- 段差を解消する
いかがでしょうか?
自宅で快適なバリアフリー生活を送る為には、手すりを取り付けたり、トイレの配置を変更するなどの対策が有効になってきます。
自宅をバリアフリーに改修するのであれば、バリアフリーの基準となっている「高齢者等配慮対策等級3」がどういったものかを事前にしっかり理解しておく必要があるでしょう。
この高齢者等配慮対策等級3では、転倒防止や車いすを使用しての生活でも支障なく、日常生活を送れる事などが挙げられています。
バリアフリーへの改修工事がしっかり行われているのであれば、親が安心できるだけでなく、自分の介護への負担も減らせるので、やるからには綿密な計画が必要です。
こういった視点は、自分だけだと見落としがちになってしまいやすいので、ぜひ今回紹介した対策を参考にして頂いて、高齢の親であっても安心して過ごせる自宅に改修して頂けたらと願っています。