老人ホームに掛かる費用と言えば、何かと高額になりがちです。
老人ホームに入居したとなると、施設介護サービスの自己負担額以外にも、居住費や食費も支払わなくてはいけません。
そうなってしまうと、毎月の費用が15万~20万円近く掛かってくる事もあるので、家計の大きな負担になるのは避けられないでしょう。
しかし、老人ホームの費用が高額であっても、マイホーム借り上げ制度や特定入所者介護サービス費を利用する事で、そうした負担を軽減する事ができるようになっています。
こうしたサービスは、今までの貯蓄や所得が少ない人ほど、利用するメリットが大きいので、検討してみる価値は大いにあると言えるでしょう。
今回は、そんな老人ホームの費用が払えない場合に今すぐやるべき対策3選について、ご紹介していきます。
こんな人に読んで欲しい
- 老人ホームの費用が払えなくて、困っている人
- 将来、老人ホームの費用が払えなくなったら、どうすればいいのか知りたい人
目次
老人ホームの費用が払えない背景とは?
まず、老人ホームの費用が払えない背景について説明していきましょう。
具体的には、
- 老人ホームの費用が払えない理由
- 老人ホームの費用が払えなくなると?
の2点があります。
以下に、それらについて、解説していきましょう。
老人ホームの費用が払えない理由
老人ホームの費用が払えない理由としては、要介護度が上がってしまい今までよりも費用が増えてしまったという事や、老人ホームの費用を支払っていた家族が亡くなってしまった事など、人により様々な事情があるようです。
私が以前勤めていた職場でも、利用者である母親の息子さんが病気で急に亡くなってしまった為に、老人ホームの費用が払えなくなってしまったという出来事がありました。
その息子さんは、面会にも頻繁に来られる方だったので、記憶によく残っています。
いつもは、1週間に1回~2回程度の頻度で面会に来られていたのですが、亡くなる1~2週間ほど前は、面会に全く来ていません。
最初は「最近、来ていないようだけど、どうしちゃったんだろう?」という風に思いましたが、風を引いていて体調を崩しているか、仕事で忙しいんだろうなというくらいにしか考えておらず、特に気にしてはいませんでした。
彼は、母親や職員と話す際には、いつも明るく笑顔でいる事が多い様子です。
その様子を見る限り、亡くなってしまうと考える人は、まずいなかったでしょう。
その為、訃報を聞いた際は信じられないという気持ちでしたし、とても驚いたのは今でもよく覚えています。
息子さんが亡くなった事を利用者である母親に伝えると、母親は最初はとても信じられないといった様子で、「どうして、そんな事になっちゃったの?」とオロオロとした様子になり、大粒の涙を流しながら悲しんでいたのです。
息子さんが亡くなった件は、職員の間でもしばらく話題になっていて「急に亡くなるほど高齢というわけでもないし、そんな様子も感じなかったから、ビックリよね」という風に話す職員もいました。
その母親の老人ホームの費用は、今まで息子さんが働いていたお金から出ている割合が大きかったので、息子さんが亡くなってしまった事で、今後の老人ホームの費用を支払うのは、難しくなってしまったようです。
そうした理由から、その母親は親戚筋やケアマネージャーとも相談の上、現在入居している施設よりも費用が安い老人ホームへ転居する事を決めました。
施設を退去する日に、名残惜しそうな様子でいた光景は、忘れようと思っても忘れる事ができません。
このように、老人ホームの費用が払えない理由には、家族が亡くなってしまったり、要介護度が上がってしまった事により費用が増えてしまったという事など、様々な事情があるようです。
それでは、もし老人ホームの費用が払えなくなってしまうと、一体どうなるのでしょうか?
老人ホームの費用が払えなくなると?
老人ホームの費用が払えなくなると、どういった状況になるのか説明していきます。
一般的には、前月分の費用が払えなかったとしても、それが理由ですぐに退去命令を出されるという事は、まずないようです。
数ヶ月程度なら、支払い期限を延ばしてくれる施設は多いと思います。
どのくらいの期間までなら支払いを延ばしてくれるかは、入居する際に交わした契約書に記載されていると思うので、その点をしっかり確認しておくようにしてください。
ただし、これはあくまでも契約上の話であり、支払いが遅れてしまうと、施設側としてはあまりいい印象を持たないところもあるようです。
経営状況が安定している施設なら、支払いが遅れても寛容な態度でいるところが多いように感じます。
それに対して、経営状況が不安定な施設の場合、契約書に記載されている期限よりも、早く入金をするよう頻繫に催促してくるといった事もあるようなので、その点は気を付けるようにしましょう。
こう聞くと「日本は超高齢化社会の影響で、老人ホームへ入居したいと考える利用者も多いはずだから、経営状況が安定している施設の方が多いのでは?」と考える人もいるのではないでしょうか?
老人ホームの需要があるのは確かですが、それが必ずしも、経営状況が安定している事に繋がるとは限らないようです。
老人ホームというのは、どこも慢性的な人手不足に悩まされている施設が多くなっています。
例え空床数に余裕があったとしても、職員が不足してしまうと、サービスに支障が出てしまう恐れがあるので、その分利用者の入居を制限しなければいけません。
空床数が増えれば増えるほど、その施設の利益も減ってしまうので、それが理由で倒産してしまう老人ホームも多いようです。
こうした事から、需要があるからといって、必ずしも利益が安定している施設が多いというわけではありません。
施設側も、毎月の経費のやりくりに四苦八苦しているという話をよく聞きます。
そうした状況だと、支払い期日を遅らせてくれるようお願いをしたとしても、入金を急かされる可能性があるかもしれません。
このように、老人ホームの費用が払えなくなっても、契約書に支払い期限を延ばせる旨の記載がされていれば、すぐに退去しなければいけないという事にはならないでしょう。
しかし、施設によっては、それでも費用をすぐに支払うよう求めてくるところもあるので、すべての施設が契約書通りに話が進むとは限らない点は、注意が必要です。
今後も、その老人ホームを利用し続けるのなら、施設側との関係が気まずくなってしまうのは、できるだけ避けたいと考える人が多いと思います。
それでは、老人ホームの費用が払えなくなったら、一体どのような対策を取る事が有効なのでしょうか?
老人ホームの費用が払えない場合に今すぐやるべき3つの対策!
(引用:一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)
老人ホームの費用が払えない背景について理解が深まったら、次は老人ホームの費用が払えない場合に今すぐやるべき対策3選について見ていきましょう。
具体的には、
- マイホーム借り上げ制度を利用する
- 特定入所者介護サービス費を利用する
- 高額介護サービス費を利用する
の3点があります。
以下に、それらについて、解説していきましょう。
①マイホーム借り上げ制度を利用する
「マイホーム借り上げ制度」を利用する事で、老人ホームの入居に必要な資金を確保する事ができます。
マイホーム借り上げ制度とは、一般社団法人である「移住・住みかえ支援機構(以下、JTIと呼称)」が実施しているもので、自宅を他の人に貸す事で家賃収入を得るという仕組みの事です。
この制度を利用すれば、自分の住居を売却する事なく、毎月の家賃収入が入ってくるので、その分の収入を足りなくなった老人ホームの費用に補填する事ができます。
1回きりの収入なら、手に入ってもすぐになくなってしまうという心配がありますが、毎月継続して収入が入ってくるのならその分、心持も軽くなるでしょう。
しかし、人によっては「毎月の家賃収入が入ってくると言っても、不動産投資で失敗する人も多いという話も聞くのに、そんなに上手く入居を希望している人が継続的に見つかるの?」と不安に考えている人もいると思います。
このマイホーム借り上げ制度ならば、そのような心配も不要となっています。
1人目の入居者が決まって退去して以降は、空き家の期間があったとしても、その期間分はJTIが代わりに賃料を支払ってくれるという仕組みになっているようです。
これならば次の入居者が中々決まらずに、賃料が長期間に渡って入ってこないという事にはならないので、収入不足になるという心配をする必要がありません。
不動産投資ならば、いつ賃料が入ってくるか分からないという不安になってしまいがちですが、空き家の期間も賃料が支払われるのなら、その分安定した収入源を確保しやすいと言えるでしょう。
賃貸となると、あるあるなのが家主と入居者間のトラブルだと思います。
このマイホーム借り上げ制度は、通常の貸借契約のように、家主と入居者が直接契約するといった仕組みではなく、家主が契約するのはJTIという事になっているようです。
簡単に説明すると、JTIが家主と入居者の間に入る仲介業者と考えて頂くと、分かりやすいと思います。
その為、入居者からクレームが発生したとしても、それは家主ではなくJTIが担当してくれるようになっているので、直接トラブルになるという事もないでしょう。
この制度を利用できるのは、原則50歳からとなっています。
しかし、定期借地の場合や空き家を相続した場合などは、例外的にこの制度が認められるケースもあるようです。
50歳に達していない人がこの制度を利用したい場合は、JTIに自分がどういう理由や状況でマイホーム借り上げ制度を利用したいか伝える事で、許可がおりる可能性もあるので、積極的に相談してみるのがいいと思います。
このように、マイホーム借り上げ制度を利用する事で、老人ホームの費用を捻出する事ができるようになるでしょう。
②特定入所者介護サービス費を利用する
「特定入所者介護サービス費」を利用する事で、老人ホームの入居に必要な資金を確保する事ができます。
特定入所者介護サービス費とは、高齢者が老人ホームに入居した際に、食費や居住費の負担を軽減できる制度の事です。
老人ホームに入居した際に、支払わなければいけない費用というのは、介護サービス費以外にも食費や居住費も、支払わなければいけない事になっています。
所得が少ない人からすれば、介護サービス費を支払うだけで毎月一杯一杯になり、食費や居住費まで支払っていくのは厳しいという人もいるでしょう。
そのような人でも、この特定入所者介護サービス費を利用すれば、食費や居住費の自己負担を減らす事ができるようになっています。
毎月の利用者の負担している金額が、設定区分の上限額を超えた場合には、その超過した金額分の負担が減るようになっており、利用者の代わりに介護保険で給付される仕組みになっているようです。
設定区分は、第1段階~第3段階までの合計3つの区分に分かれています。
それぞれの区分で対象者や上限額が違うようになっており、例えば第1段階の場合だと、生活保護を受給している人や市町村民税非課税の人などが対象となっているようです。
食費の負担限度額は、300円となっており、一番低い金額が設定されています。
それに対して、第3段階の場合だと、本人の公的年金収入額などが120万円超の人などが対象になっており、食費も1,360円と、一番高額な料金になっているようです。
この事から、設定区分を超えた金額の負担が減ると一口に言っても、所得の程度によってその上限額にかなりの開きがあるという事が分かります。
所得の低い人ほど、毎月の負担額も減るという仕組みになっているので、そういった方ほど、この制度を利用する価値は大きいでしょう。
この制度ならば、毎月食費や居住費に10万円近く支払っていた人でも、第1段階の人なら3万円程度にまで抑える事ができます。
7万円近くも毎月節約する事ができるので、かなりお得に感じるでしょう。
この制度を利用するには、事前に市区町村の認定を受けておく必要があるので、積極的に申請をしてみる価値はありそうです。
老人ホームの費用が高額で、毎月苦しい思いをしていたという人でも、この特定入所者介護サービス費を利用する事で、そうした負担を軽減する事ができると言えます。
③高額介護サービス費を利用する
「高額介護サービス費」を利用する事で、老人ホームの費用が払えないという事態を、回避する事ができます。
高額介護サービス費とは、毎月の利用者の負担額が設定区分の上限額を超過した場合に、その超過分が介護保険で支払われる仕組みの事を指しています。
設定区分は、第1段階~第4段階までの合計4つの区分で分かれており、それぞれ対象者や上限額が異なっているようです。
例えば、第1段階だと生活保護を受給している人が対象になっており、上限額は15,000円となっています。
それに対して、第4段階だと課税所得690万円以上の人などが対象で、上限額は140,100円です。
特定入所者介護サービス費と同様に、所得の低い人ほど上限額が低く設定されているようなので、そうした人ほどこの高額介護サービス費を利用するメリットは、大きいと言えるでしょう。
ただ、この制度を利用する際に注意しておいてほしいのが、老人ホームで掛かるすべての費用を上限額として設定する事はできないという事です。
誤って費用のすべてを上限額として計算してしまうと、自分が考えていたよりも少ない給付しか受けられなかった、という事にもなりかねないのでしょう。
その為、どういったものが高額介護サービス費に含まれないものなのかを、事前にしっかり把握しておく事も必要になってきます。
例えば、福祉用具購入費や日常生活費、居住費などは高額介護サービス費には含まれないようになっているので、その点は気を付けるようにしてください。
居住費が高すぎて悩んでいる場合、この高額介護サービス費では負担を軽減する事はできないので、そうした場合は特定入所者介護サービス費を利用した方がいいでしょう。
このように、高額介護サービス費を利用する事で、老人ホームの費用に苦しめられるという事がなくなるかもしれません。
まとめ
老人ホームの費用が払えない場合に今すぐやるべき対策3選
- マイホーム借り上げ制度を利用する
- 特定入所者介護サービス費を利用する
- 高額介護サービス費を利用する
いかがでしょうか?
老人ホームの費用が払えなくなったら、マイホーム借り上げ制度や特定入所者介護サービス費を利用する事で、収入源を増やせたり、費用を抑えるといった効果が期待できます。
マイホーム借り上げ制度ならば、2人目からの入居者が見つからなくても、その間の家賃収入はJTIが代わりに負担してくれる仕組みになっているので、賃料が入ってこずに収入が不安定になるという事はありません。
特定入所者介護サービス費や高額介護サービス費は、所得が高い人よりも所得の低い人の方が、給付を受けられる金額も高額になっているので、所得の低い人ほどそうしたサービスを利用してみるメリットは大きいと言えるでしょう。
こうした対策を取るか取らないかで、毎月発生する老人ホームの費用に対する負担も大きく違ってくるので、ぜひ検討してみてください。